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コラム
 

第51回「恥じらう心の美しさ」

 5年ほど前にタイ山岳民族の村でお正月を過ごしました。お正月にはお餅や熟れ寿司などを準備し、服装もいつもよりは少しきれいな民族衣装を着ます。
 村の女性が僕がとまっている家に遊びに来ました。美しい服装と素直な顔立ちにひかれ、写真を撮らせてもらうことにしました。
 ところが、いざ写真を撮る段になってカメラの方を見てくれないのです。何度もお願いしたのですが恥ずかしいからと言って目を伏せたままにしています。
 しつこくするのは嫌いなので撮影は止め、食事を楽しみました。食事をしながらタイの人たちは「恥じらう心」をもっていることに安心しました。
 今の時代、ややもすれば「私が、私が・・」と自分を強調しがちです。恥じらう心の中には純粋な心とともに自分の立場や相手を思いやる心も兼ね備えていると痛感したのです。
 彼女は僕が滞在中に何度も家に訪ねてきては日本のことを聞きたがりました。タイ語を話せない僕は身振り手振り、そして写真や絵で日本のことを教えてあげました。
 おそらく話は全く通じていなかったのでしょうが、彼女はいつもうなずき僕を傷つけないように心配りをしてくれたのかもしれません。

文・写真:ジャポニカ学習帳「世界特写シリーズ」取材班 山口 進

 
 
 
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