
小学校1年生の時、私はおたふくかぜにかかりました。熱と痛みで苦しむ私を、母がそばでじっと看病してくれたのは言うまでもありません。
夕方になって、母は「そうだ、お団子を作りましょう。」と言って、台所のドアを開けたまま、粉を練り、ふかして、真っ白いピンポン玉ぐらいの団子をたくさん、それこそ山のように作りました。
私はその後ろ姿を布団の中から見て、「どうしてお団子を作るのかな?」と不思議でなりませんでした。
母は、お団子をきれいなお皿に積み重ねて窓際に置き、庭からススキを何本か切ってきて、その横に活けました。そして私が寝ている蒲団をずらして、ちょうど寝ていても見える場所に運び、窓を開けたのです。
それからしばらくして、お団子の向こうには、真ん丸なお月さまが笑いかけるように昇ってきました。明るいお月さまの前に、シルエットで浮かび上がるお団子とススキ。
「今日は十五夜だからね。明日になればお団子が食べられるよ。」

あれから50年以上が過ぎましたが、十五夜になると、いつもあの光景と母の自然な優しさが思い出されるのです。
子供のころに見た情景や人の心は、一生忘れることはなく、その人間を成長させてくれる大きな原動力となるのです。
文・写真:ジャポニカ学習帳「世界特写シリーズ」取材班 山口 進
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