
私は、山梨県の西北部に住んでいる。標高700mほどの山の中なので、冬は気温がマイナス10度ほどにまで下がることがあるが、雪はあまり降らない。降っても年に3、4回、積雪量も知れている。
数年前に1mほど積もったことがあったが、その後、大雪は見られない。雪が好きな私にとって、唯一不満なことだ。
こんなことを群馬県の藤原にいる友達に話すと、なんてバカなことを、と一笑される。豪雪地帯の藤原での生活は、まさに雪との挌闘であるらしい。
家は雪にうずもれ、出入りすらままならない。雪下ろしをしなければ、家がつぶれる。部屋の中は暗く湿り、いつも重くるしい。そんな生活が、半年近く続くという。
小さい頃、父の仕事の関係で、秋田の男鹿半島、船川に3年ほど住んだことがある。10月末から寒気がやってきて、11月になると雪が舞い始め、あっという間に山も畑も雪で覆われた。小さかった私たち兄弟は、大人の苦労も知らずに雪を喜んだ。
父の日課に雪かきが加わり、耳あてのついた帽子をかぶった父は、黙々と道を作り、かいた雪を道端に積み上げてゆく。重労働であったに違いない。父は雪かきを終えると職場に出かけ、私たちは新しくできた道を通って学校に通った。
雪の中での遊びを私たちはいろいろと考えた。一番おもしろかったのは「雪玉の壊しっこ」だ。
雪を丸く何層にも固めて、マーブルのような直径10~20センチほどの雪玉を作る。それを雪の上におき、何人かでお互いの雪玉をぶつけ、壊しっこをするわけだ。
この勝負は、いかに硬い雪玉を作るかということで決まる。湿らせた雪玉を凍らせたものを核に入れ、その周りに何日もかけて雪を重ねてゆくと、カチカチの雪玉ができる。しかし、ここにも子供同士の暗黙の決めごとがあって、氷になってしまったものは使用禁止だった。
じゃんけんで負けたほうが雪玉を雪の上におき、相手が雪玉をぶつける。ぶつかると、層になった雪玉は外側からはがれ落ち、どんどん小さくなる。代わり番こにぶつけ合い、最後の核になる部分が割れると負けだ。雪玉の作り方やぶつけ方が下手だと、自爆してしまうこともある。
きれいな雪面を踏み固めてジグザグの道を作り、その道だけを使っての鬼ごっこも楽しかった。
雪はこんな面白い遊びを私たちに教えてくれた。こうして、雪だけでさまざまな遊びを創り、毎日のように遊び狂った。
静かに降りつむ雪は、子供の想像力をかきたてるものだ。

山梨では、例年1月初めに初雪が降る。
11月、洗礼のように南アルプスに初雪が降る日がある。雪はすぐに消えるのだが、その2、3週間後、今度はどっかりと甲斐駒岳から鳳凰三山にかけての稜線が白くなる。そしてさらに何日か後に、雪前線は麓までおりてくるのだ。
楽しかった子供のころを思い出し、初雪が来る日をいつかいつかと待ちながら窓の外を眺めるのは、私にとって、冬の最大の楽しみだ。
文・写真:ジャポニカ学習帳「世界特写シリーズ」取材班 山口 進
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