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コラム
 

第21回「余白を楽しむ活」

 私が中学生の時、国語の教科書で一篇の美しい詩に出会った。
 三好達治の「甃のうへ」だ。
 あえて原文のまま紹介しておこう。
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甃のうへ

あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららか跫音空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ

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 この一篇の詩が、14歳の私に生涯忘れられないほどの風景を刻み込んでくれたことは、幸運としか言いようがない。
 この詩が、三好達治の詩集「測量船」で発表されたものであることを知るのはずっと後のことだった。
 私が使った教科書で引用されたのはあくまでも国語の理解のためだ。
 言葉、詩というものを中学生に理解させる目的なのだ。
 だから詩は解説文の中に無造作に置かれていたように記憶している。
 しかし、僕は先生の説明を聞くことなく、この詩の世界で遊んだ。
 このときから数十年たって、神田の古本屋で三好達治の詩集を見つけた。
 それは店頭のワゴンの上にのせられていたのだ。

 抑えきれない気持ちを押して、本をわきに抱え、走るようにして家に帰り、詩集を開いた。
 頁を繰ったとき、おおきな感動が僕の胸にあふれた。
 はたして「甃のうへ」は見開き掲載されていたのだ。

余白を楽しむ

 同じ詩なのに、教科書で感じた空間とは、また別のものがそこには存在しているのを感じた。
 あの素晴らしい春の空気、登場する女性のしなやかな表情と動きが、さらに広がるのを感じることができた。
 それは行間や余白が与えてくれる想像空間とでも言い換えることができる。

 最近、文庫本でこれらの詩集が復刻されたように聞いている。
 忙しい時代には違いないが、人間の幸せは、このような空間、空白のなかにあるのではないかとひそかに思った。

文・写真:ジャポニカ学習帳「世界特写シリーズ」取材班 山口 進

 
 
 
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