
最近のことだが取材でベトナムに行ったときに感染症にかかった。日本に帰ってきて体調がおかしく、10数年前に経験したデング熱と同じ症状だったので、すぐに熱帯医学研究所で検査をしてもらった。結果はウィルスが発見されず、原因不明のままに終わった。
10数年前に初めてかかったときは血液をアメリカに送りその判定を待ったが、それには数日間を要した。検査結果を待つまでの時間は不安感と高熱にうなされながらたえるしかない。検査結果が出たとしてもデング熱は治療薬も予防薬もない病気なので治療のほどこしようがない。あとは体力の勝負だ。40度近い高熱が1週間、その後、熱は徐じょに下がるがそのころから皮膚の下を無数の虫がはい回るようなざわざわした不快感が続く。
デング熱には型が4つあり、僕が最初にかかったのは4型で最も少ない型だった。僕の場合は内出血を起こし、全身に発しんが出た。医者は珍しい例だからと写真を撮って資料にしたようだ。
デング熱は体力がない人がかかると死亡することがある。さらに2度目にかかったとき、前の型と異なると重体になる可能性がある。僕は最初にかかったのが罹病(りびょう)率の低い型なので2度目に型が異なる可能性は高い。デング熱を媒介(ばいかい)するのはネッタイシマカやヒトスジシマカという蚊だが、昼間に活動することが多い。
思い起こせば罹病したときはジャングルの蚊柱の中で撮影していた。「いつも虫に飯を食わせてもらっているから、ときには虫に食わせてやるんだ」などと大口をたたいていたが、最近では虫除けをぬり、ねるときには蚊帳(かや)を使うようにしている。こんな危険な経験をしてもこりずに行きたくなるのが取材の魅力だ。
最近、予防ワクチンができたというニュースを耳にしたが、これで多くの子どもたちが助かるかもしれない。
文:ジャポニカ学習帳「世界特写シリーズ」取材班 山口 進 |