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山口進の気まぐれ撮影日誌
山口進 プロフィール
1948年、三重県生まれ。山梨県在住。
ジャポニカ学習帳の表紙の写真を長きにわたり撮影している。
取材テーマは「共生」。花と昆虫の共進化や花生態学など。著書多数。
NHKの自然科学番組「ダーウィンがきた!~生きもの新伝説~」などの企画・撮影・出演、山梨大学教育人間科学部非常勤講師も勤める。
最近の記事
ごあいさつ

現地の人はすごい。

2014/12/19(金)

〜ジャポニカ学習帳 表紙の花より〜 JL-8-1 こくご

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南アフリカでは道に迷うことがよくあります。風景がよくにていて、山などのめじるしになるものが少ないからです。また花をさがしているときはいつも下を向いてうごきまわりながらさがすので、自分が歩いてきた道がわからなくなります。
その時の心強い味方がGPSとよばれるポケットにはいるほどの小さな機械です。
GPSは衛星からの信号を利用して自分がどこにいるかおしえてくれます。歩いてきた道すじや、見つけた花の位置をGPSにおぼえさせておくことができます。
もし道にまよったら歩いてきた道をGPSでしらべると、もとに戻ることができます。またみつけた花をもういちど撮影したいばあい、その位置を記録して、何日か後に同じところにくることができます。
写真の花も小さなつぼみのときに見つけましたが種類がわからなかったので1週間後にきて撮影したものです。
でも現地の人はGPSなど使いません。どこにいても自分の位置がわかるし、花があった場所も簡単に思い出すことができるのです。
やはり自然とともに生きている人はすばらしいと思わずにはいられません。

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観光地もよい撮影場所。

2014/11/28(金)

〜ジャポニカ学習帳 表紙の花より〜 JL-2 さんすう

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南アフリカで花が咲くばしょとして知られているのが南西部に広がるナマクアランド地域です。ナマクアランドの中心になる町がスプリングボックです。
取材班はケープタウンの町から車で花を撮影しながら一週間後にスプリングボックにつきました。とちゅうにはあまり町がなかったのですが、スプリングボックはホテルやスーパーマーケット、本屋さん、アイスクリーム屋さんまである大きな町です。
本屋さんがあると必ずたちより、花や生き物の本をチェックします。

日本ではわからなかったことも、現地に来ると情報を手に入れることができます。
本よりもよいのが現地の人からの情報です。南アフリカは世界中から花を見に来る観光客がおおく、地元の人たちも花が好きなので、有名なばしょには案内所があります。案内所にゆけばどこでどのような花が咲いているかがわかります。
しかし案内所で教えてくれるばしょには、たくさんの人があつまるために撮影にはむきません。そこで教えてくれたばしょには行きますが、そこでは撮影せずに観察だけをします。土のようす、まわりのようすなど、どのようなところで咲いているかをチェックするためです。
同じような条件のばしょには、同じ花がさいている可能性が高いからです。
ところがうまく行かないこともよくあります。写真の花はほかでは見つけることができず、ふたたび教えられたところにもどって観光客といっしょに撮影しました。

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花の撮影でぜいたくは言えない。

2014/10/17(金)

〜ジャポニカ学習帳 表紙の花より〜 JL-1 さんすう

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南アフリカは8月から9月にかけて一番美しい季節をむかえます。取材班はこの季節をねらって撮影旅行に出かけるのですが、スケジュールを決めずに出かけます。というのも花の状態は年ごと日ごと、場所ごとに変わるからです。その年は花が咲かない、ということもあります。
あらかじめ現地の人と連絡を取りあって情報を集めますが、先のことなのでどの情報も確実ではありません。
日本から近いアジアの国の場合は、状態が悪かったら一度帰国して、また出かけることもできます。しかし南アフリカは航空運賃も高いため、失敗を覚悟して出かけます。
現地に着いて何か所か見てまわるうちに、ようやく花が咲いているかどうか、どの辺りが良く咲いているかが分かるのです。
問題は泊まるところです。この時期、世界中からたくさんの人々が花を見に集まって来るために、どのホテルも予約でいっぱいです。
花を見る前にまず宿泊場所のチェックをしなければなりません。町なかはどこもいっぱいなので郊外を探します。あるときは小さな雑貨店の2階、あるときは牧場の離れ家、など、泊まれればいい、という気持ちで探します。
こういうところには観光客は来ませんので大変静かで、かえってゆっくりと休むことができます。それにだれも知らないような場所を見つけることもできます。
写真のキク科の花はヒツジ牧場に泊まらせてもらったときに庭に咲いていたものです。

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花園を歩く。

2014/4/17(木)

〜ジャポニカ学習帳 表紙の花より〜 JL-67 連絡帳

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「花園」という言葉があります。花園は歩く隙間もないほど花が咲き乱れ、大地が美しく輝くところです。地球上には素晴らしい花園が何か所もあります。よく知られた花園のひとつが南アフリカのナマクアランドです。アフリカ南西海岸沿いに広がる乾燥地帯です。冬は茶色い大地がむき出しになっていますが、春になると一面の花でおおわれます。
日本の春を考えてみるとわかりやすいのですが、朝夕は気温が下がります。だから花は気温が上がる9時ごろから咲き始めるのです。
8月の吐く息が白くなるほどの早朝、宿泊所を出て花園に向かいます。
現地到着8時、まだ花たちは眠っています。がたがた震えながら太陽光で体が温まるのを待ちます。9時、花ばなが動き始めました。花弁をゆっくりと開いてゆきます。すべての花は太陽に向かって咲いています。ナマクアランドの花が咲いているのはお昼ごろまでです。そのあとは少しずつ花弁をたたんでゆきます。
その日の撮影も3時が過ぎ帰る支度を整えて車に乗ろうとしたとき、なにげなく後ろを振り返ると黄色に輝く花があちらにもこちらにも咲いているではありませんか。
僕は驚き、仕舞い込んだカメラを再び出して撮影をしました。花弁は斜光に照らされて透き通るように美しく輝いています。太陽が傾く3時過ぎになって咲く花があったのです。それが写真のヘスペランサです。

花たちも狭い地球の上で時間を分け合いながら仲良く咲いているのかもしれない、と花たちの優しさに感激しながらその場をあとにしました。そのとき、花が僕を見送ってくれているようにも思えたのです。

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ごあいさつ

2014/4/17(木)

 

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ジャポニカ学習帳の「世界特写」シリーズが始まって30年。この間に地球上で大きな変化が起きました。
地球環境が悪化し、かけがえのない自然が目の前でガラガラと音を立てて崩れていったのです。その現状を前に僕は涙をこらえながら旅をしました。
でもそんな僕を救ってくれたものがありました。それは美しい花ばなや虫たちの姿でした。悪化する環境の中で必死に生き抜く、美しくもたくましい姿があったのです。
そしてもうひとつの大きな存在、それは各地で出会う人びとのあたたかな表情でした。特に子どもたちが見せてくれた笑顔は「素晴らしい未来があること」を感じさせてくれたのです。
国が変わろうとも、時代が変わろうとも子どもたちの笑顔は変わりません。
自然で屈託のない笑顔は宝だと僕は思いました。
これからの地球で生きてゆく子どもたちの前にはさまざまな困難が待ち構えていることでしょう。その子どもたちに僕たちができることは何か。それをいつも考えながら撮影を続けてきました。
そして強く思ったことは、今ある自然を記録しておくことでした。自然を知らないで育つかもしれない子どもたちに、こんなに美しい世界があるのだということを見てほしいのです。
その記録を見た子どもたちが「この素晴らしい自然を残そう」という気持ちになってくれるかもしれません。
また、子どもたちは好奇心に満ちています。未知や不思議に遭遇することにより大きく成長してゆくものです。
今ある素晴らしい星「地球」を記録しておくことは、将来を担う子どもたちにきっと役立つに違いありません。美しい花ばなや大自然を見ることであの笑顔は永遠につながると信じています。

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